2016年11月01日

採譜の基礎知識

採譜をすることで養われる、耳の感覚とリズム感、そしてフラメンコの習慣(リズムや音の使い方など)を身につけることによって、フラメンコの理解が深まるだけでなく、自分で曲作りやアレンジができるようになります。
フラメンコを、より楽しめるようになるわけです。
また、レパートリーを格安で?増やすには、自分で採譜するのが最も手っ取り早い手段でもあります。
初めは、とても難しく感じられるし面倒くさく感じられると思いますが、慣れるに従って外国語の聞き取りと同じように、音の塊が、ひとつのメッセージとして聴こえるようになってきます。
もちろん、聞き違いなどもありますが、続けて行くに従って正しい音を捉えられるようになってきます。ぜひ続けて挑戦していただきたいと思います。
では、実際に、採譜という作業には、どのようなことが必要になるか‥次の事柄について耳を澄まして聞くことが必要になります。

1.調性の聞き取り
  フラメンコギターでも様々なキー(調性)を使います。
 同じアレグリアスでも、ミラブラスやカラコーレスやカディスのアレグリアスなどでは、キーが異なります。
これから採譜する曲が、何の調なのかが分からないと、とんでもないことになってしまいます。
 基本的には、リズム形式によって使われるキーが、ある程度限定されますから、まずは基本的なキーの様々な形式の曲を少しづつでも実際に弾いて経験をつむ必要があります。

2.調弦の理解
  たとえばロンデーニャではE弦とB弦を、それぞれレ、ファ♯に調弦して弾くことは知られていますが、最近では新しい試みというか、今までとは違った響き、音の広がりを欲するあまり、今までには無かった調弦で弾くことが増えつつあります。
たとえば、パコ・デ・ルシアの「シロッコ」でのtangosは @=Re A=La E=Laに、トマティートのtarantas ではC=Si D=Sol E=Reに調弦して弾いています。
これに気が付かずに採譜を始めると、弾けない音が出てきてビックリしてパニックを起こしてしまいます。
こんなことを避けるために、採譜する前に何度も聞いて、あらかじめ調弦を知る必要があります。

3.メロディーの聞き取り
  調弦と調性とリズム形式がわかった後に採譜の作業に取り掛かります。
まずはメロディーから聞き取る方が取り組みやすい場合が多いようです。その前に、鼻歌として口づさめるようになるまでしつこく何度も聞きまくります。その方が結果的に短時間で採譜できることが多いようです。

4.リズムの聞き取り
  これは、ラスゲアードで弾いている部分だけにいえることではありません。
 単音のメロディーの場合にも、休符の使われ方にも、リズムの流れやイントネーションが生きています。
フラメンコはリズムが命ですから、これらのリズムの息遣いを聞き取って真似しなければ、ただの音の羅列になってしまいます。いわゆるフラメンコらしさを身につけるためには、絶対に避けて通れないところです。

5.低音と和音の聞き取り
  低音を聞き取るということはフラメンコの“音の色合い”を理解する上で重要なことです。
低音が聞き取れるということは和音を聞き取ることにつながるだけでなく、ポジションを探ることにもつながってきます。
 最近ではジャズの影響も強くなってきて、分数コードとして理解した方が良い場合も見受けられるようになってきています。しかし、まずは難しいことは後回しにして、低音を、できたら“いつまで響いているか?”ということにも配慮しながら聞き取るようにしましょう。

6.ポジションの決定
  ギターは同じ音程を何ヶ所かで出すことのできる楽器です。
 特にミドル〜ハイポジションで開放弦を使ったコードを“ジャン”と弾かれたとき、とても聞き取りが難しいものです。
ある程度はフラメンコの習慣を知ることによって推測できる場合もありますが、先ほども書きましたが、ジャズの影響を受けた“聞いている分には気持ちの良い不協和音”も多くなってきました。
ちょっとした半音のズラシによっても違った色合いの響きを出せますので、このあたりは慎重に聞き取る必要があります。
この和音の聞き取り以外に、スラーの係り具合、音の消え方などによって、ポジションが掴めるようになります。
ポジションは、出ている音よりも消えて行く音、を聞き取るのがコツです。
 
7.メカの聞き取り
  ギターから弾き出された音が分かっても、“さて、この音群はどんな指使いで弾かれているのか?”という問題が出てきます。親指で弾いているのか?‥‥アルペジオはどこまでなのか?‥‥アルアイレかアポヤンドか?‥‥。
これも数をこなしてレートリーが増えてくると、かなり正確に再現できるようになりますが、初めのうちは音質の違いから推測することが良いようです。

本場のギタリストたちは“自分のしるし”を、どうやったら綺麗にカッコ良く込められるか‥‥ということに励んでいます。それらを徹底的に真似して私たちのモノにできたとき、私たちでも良い意味での“自分だけのフラメンコ”が弾けるようになると思います。
目の前で弾かれるリズム、ファルセータをひとつひとつ真似して覚えていく‥‥という、本場のギタリストたちと同じ作業をすることによって、本物のフラメンコが分かるのだと思います。
がんばりましょう。 


posted by 飯ヶ谷 守康 at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | フラメンコ処方箋

2016年10月14日

アルペジオとリズム-1

 またまた妙な?ことを書いている、と思わないでくださいね。
今回は、普段何気なく弾いているアルペジオにもリズムがある、ということを意識して欲しいので書いてみた次第です。題して『アルペジオとリズムについて-1』、当然-その2-もあります‥‥。

そもそもアルペジオというのは和訳で“分散和音”ということになっています。とても良い訳だと思います。つまり和音を“様々な指使いで”分散させて和音の響きを感じさせるもの‥。
ただ、実際の曲の中では、単音にばらけているのが分散和音、つまり和音の響きなのか、或はアルペジオに似た“単音によるメロディー”なのか‥見極めなければならないのが面倒なところ。
この見極めができなと“オカシナ理解・演奏”になってしまうでしょう。
といっても、弾いてる人も聴いている人も理解できていない場合もあるのが哀しい‥。

さて、ここでアルペジオの役目に付いてザッと考えておこう。
1.和音の響きを単音の羅列で表現する。(但し、部分的に複音の場合も含む)
2.なだらかな音の流れ・動きと、単調なリズムを表現する。
 この“なだらかな”という感じを表現するには、メロディーのような単音の羅列を使ってしまうと、音列の“色合い”が強く感じられがちの様です。
ということで、アルペジオを使うのが一般的のようです。
このあたり、文字だけだと、分かりづらいと思いますが‥‥ご了承ください。

では、ここで簡単な実例を使ってザックリと説明しましょう。
譜面をクリックして別画面で見てください。

alpegio&ritmo-1.jpg

1.は3拍子で書いてあります。
この音列と全く同じ音列で拍子が6/8のものが次の2.です。
誰かに聴いてもらって、3/4と6/8の違いができているか確認してもらってみてください。
さて、どこが違うのか‥‥!?

答えの一例)
1.の場合は、自然とm(中指)の音をハッキリと、或は強く弾いていると思います。
2.の場合には、自然とa(薬指)の音をハッキリと、或は強く弾いていると思います。
そのように響いていますか!? でしたら、OKです。
そう響いていなかった人は、少しばかり意識してください。
といっても、指を弾く強さではなく、弾いた直後のフォロースルーを大きく取るだけで良いのです。
音は力ではなく、動きで出すものです。←ここのところ、重要ポイントです!!

なお、弾き始めのp、くれぐれもド〜ンと強く弾かないようにしてください。
悪い意味での“頭乗り”の癖の強い私たち日本人、気を付けましょう。

さて、では3.を何気なく弾いた時に、どう聞こえるでしょうか‥? 何度も試してみてください。
何度か弾いているうちに“各拍の裏のiが印象的に感じられる”ようになればOKです。つまり、これは分散和音としてのアルペジオの中に拍裏のリズムが隠れているのです。
といっても、けして強い拍裏ではありません、“ひそひそ話”のようにコソコソとした感じで感じられる方が正解でしょう。わざとらしい拍裏のリズムは、ちょっと‥?‥。

続いて4.は、どうでしょう‥‥??
1-2、3‥‥と聞こえますか!?
1〜2拍がつながっていて、3拍目が分かれている‥‥みたいに弾けていればOKです。

いかがでしょうか!?
アルペジオと言っても、ただ単音が和音になっていれば弾けている、ということにはならないのです。そこには“隠れたリズム”が息づいているのです。
“な〜んだ!、そんなの常識だろ〜!”と思った方は、自分の感性を信じて練習を続けてください。
そうでない人は、ちょっと意識を変えた方が良いかもしれません。
でないと、伝統的なフラメンコだけではなく、リカルドやサビーカス、更にはパコ・デ・ルシアやビセンテ・アミーゴを弾くことは難しくなるだけでなく、理解することも難しくなってしまいますから‥‥というか、誤解してしまうと思います。

ちなみに、ラスゲアードにも、当然リズムというか、リズムのイントネーションがあります。ただひたすら“ジャラジャラ”と弾いていては、とてもフラメンコにはなりません、念のため‥‥。

では、また‥‥。
posted by 飯ヶ谷 守康 at 17:50| Comment(0) | TrackBack(0) | フラメンコ処方箋

2016年09月20日

ピカード(picado)の特訓−参考動画

 今回は“これぞピカード”という動画をご紹介します。
本場ではピカードが普通に使われていますが、残念ながら日本では“遅いピカード?”がほとんどですね。
確かに、ピカードを使わなくてもフラメンコは弾けます。
しかし、唄い手の“ア〜イ〜、イ〜イ〜イ〜”などの感じをギターで表現するには、速いスラーの連続かビカードでしか表現できません。
また、ファルセータのキメで使った時の“キメ感”は、とても気持ちの良いものです。

技術の少ない?ギタリストはジャラジャラとラスゲアードをひたすら“かき鳴らす”というセンスの無さで代用しようとすることが多いようです。哀しい現状ですね。

このニーニョ・セベさん、けして天才ではないようです。
ほんの数年前まではピカードというよりも“ちょっと速めの音階”程度でした。
しかし、いつの間にか“何かを掴んだ”ように感じられます。何か閃いたのでしょうね‥‥!?

ということで、パコ・デ・ルシアとは異なる力の使い方ですが、別の言い方をすれば、私たち凡人には非常に参考になると思います。
音の連続性に注目してください。
そして、私の表現での“ギヤチェンジ?”が見事になされていることに気が付いてください。
私の考えでは、運良く閃いた人であれば、この人ぐらいは気持ち良くビカードができると思います。
実際に、本場ではスピードに関してはニーニョ・セベさんのようにビカードが弾ける人はアマチュアの中にもたくさんいますから‥‥。

ただただ繰り返しているだけでは閃かないようです。あらゆる力の使い方・バランスを試行錯誤を続ける中で閃くようです。
それほど簡単ではありませんが、不可能ではありません。

ちなみに、この曲はジョン・マクラフリンによる“Meeting Of The Spirits-精霊との出逢い”という曲のアドリブ部分のようです。スーパーギタートリオで弾かれていましたね、懐かしい!!

何度も何度も見つめてみてください、ある瞬間に“その気に”なって弾けるようになるかもしれません。
幸運を祈ります。
nino seve.jpg



posted by 飯ヶ谷 守康 at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | フラメンコ処方箋